研究概要
A01班
数値シミュレーションによる新しい超均質非周期物質相の探索
本計画班では、さまざまな非周期構造をコンピューターシミュレーションで作り出し、ハイパーユニフォーミティ(HU)の考え方に基づいてそれらを分類します。そのために、構造を自動生成するアルゴリズムや、機械学習を使って分類するプログラムを開発します。
また、電子の運動や磁石の性質に関わるスピンが、こうした非周期構造の中でどのように分布するかを調べ、それをHUの枠組みで解析し、新しい非一様電子・スピン相を見つけることを目指します。
電子の動きや物質の性質に関するシミュレーションを通して他の計画班と協力し、理論と実験の架け橋としての役割も果たします。
A02班
超均質非周期物質の新奇物性探索と統一的描像の確立
本計画班では、さまざまなタイプの固体(結晶・準結晶・非晶質)について、その性質を新しい視点から見直します。鍵となるのは、ハイパーユニフォーミティ(HU)という考え方で、これを使って、物質の構造と性質の関係を理論と実験の両面から解き明かしていきます。
最近、準結晶と呼ばれる特殊な構造をもつ物質で、超伝導や強磁性など、これまでにない性質が発見され注目を集めています。そこで、本研究では、(1) 物質が外からの刺激にどう応答するか、(2) 温度などの変化によって性質が急に変わる「相転移」の仕組みの解明、(3) 従来の物質にはない新しい性質の提案、の3つを中心に取り組みます。
HUを物質の性質解析、特に「非周期的な構造」を持つ物質(準結晶や非晶質)に対して応用する試みには、近年、ますます社会的な関心が高まっています。こうした背景のもとで、本課題では、次世代の機能性物質創造に向けて、独創的かつ先進的な研究に挑戦します。
A03班
超均質非周期人工構造の設計によるメソスケール高機能材料の実現
本計画班では、「メソスケール」と呼ばれる中間的なサイズの構造をもつ非周期構造に注目しています。特に、光をコントロールする2次元の素材(フォトニック物質)や、柔らかい3次元の素材(ソフトマテリアル)を設計し、実際に作り出すことを目指します。
ハイパーユニフォーミティ(HU)の概念に基づいて、ガラスのような不規則な構造(アモルファス)や、準結晶と呼ばれる特殊な構造を定量的に評価します。これによって、光の通り方や素材の強さなどの性質がもっともよくなる構造をデザインします。特定の波長の光を通さない素材や強くてしなやかなゴムのような新素材の開発につなげていくことを目指します。
構造(A01班)と物性(A02,A04班)について他の計画班と協力し、それらと機能との関連を先駆的に明らかにする役割を果たします。
A04班
超均質アモルファス物質:合成と構造解析
"Isotropic disordered hyperuniform materials [...] are exotic ideal states of matter that lie between a crystal and liquid: they are like perfect crystals in the way they suppress large-scale density fluctuations, [...] and yet are like liquids or glasses in that they are statistically isotropic with no Bragg peaks and hence lack any conventional long-range order."
[S. Torquato, Hyperuniform states of matter, Physics Reports 745 (2018) 1-95]
本計画班は、ハイパーユニフォーミティの概念を材料科学に応用し、この特異な状態に近づく材料の探索と構造解析を行います。3次元(準)ハイパーユニフォーム材料の原子構造を詳細に調べるとともに、アモルファス−アモルファス相転移など、長波長極限において顕在化する微細な構造変化を捉えることを目指します。
アモルファス材料の評価に新たな枠組みを構築し、特定のニーズに応じた機能をもつ新材料の発見へとつなげることが本研究の最終目標です。実験・理論・シミュレーションを融合した本学際的研究は、ハイパーユニフォーミティの概念を現実の材料開発に展開するための重要なステップとなります。
班間連携
本研究プロジェクトは、全体をまとめる「総括班」と、A01-A04の4つの「研究計画班」で構成されます。
A01班(シミュレーションチーム)は、コンピューターを使った構造生成や電子の動きのシミュレーション、及びそれに必要な計算手法の開発を行います。他のチームが集めたデータの分析もサポートします。
A02班(物性研究チーム)は、A03やA04班が作った特殊な素材を含めて、それらの性質を調べたり、それに基づく理論を作ったりします。
A03班(構造設計・合成チーム)は、A01やA02班と連携しながら、理論的に設計された特殊な構造や機能を、高分子材料や光を操る素材として実際に作り出します。
A04班(アモルファスチーム)は、規則性のないアモルファス構造を持つ素材(HUアモルファス)を作り出し、その構造を詳しく調べたり、性質を明らかにしたりします。
プロジェクト全体を統括する総括班は、すべての計画研究班の研究状況を把握し、班間でスムーズに連携できるよう調整します。